好きな動物
たもつ
夏のショッピングモールは
何かの記念日のように
沢山の人で溢れかえっていた
前を歩く老人のTシャツに
ウィンクをした大きな
マンガの猫が描かれていた
猫が好きな人ならいいのに
そう思った
母方の祖父は猫舌だったそうだ
猫舌の祖父は
南の島のジャングルで
味方に見捨てられ
犬死した
猫や犬ではなく
本当は馬が好きだった、と
祖母は教えてくれた
その祖母も
表替えしたばかりの
畳の匂いを嗅ぎながら
亡くなった
春に生まれて
「はる」と名付けられたが
葬式は秋に執り行われた
最後まで
動物は飼わなかった