好きな動物
たもつ



夏のショッピングモールは
何かの記念日のように
沢山の人で溢れかえっていた
前を歩く老人のTシャツに
ウィンクをした大きな
マンガの猫が描かれていた
猫が好きな人ならいいのに
そう思った
母方の祖父は猫舌だったそうだ
猫舌の祖父は
南の島のジャングルで
味方に見捨てられ
犬死した
猫や犬ではなく
本当は馬が好きだった、と
祖母は教えてくれた
その祖母も
表替えしたばかりの
畳の匂いを嗅ぎながら
亡くなった
春に生まれて
「はる」と名付けられたが
葬式は秋に執り行われた
最後まで
動物は飼わなかった



自由詩 好きな動物 Copyright たもつ 2006-12-05 20:13:53
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