ふたりがひとつだったなら
朽木 裕

愛する人と手を繋いだりキスしたり抱き合ったりするとき、
いつも考えることがある。

私達の身体の境界は何処ですか?
心の境界は何処ですか?
いつからふたりはふたりで、
いつからひとつになるのですか?

温度が混じる。
息が重なる。

ふたりの境界は何処?
肌を撫でるこの指先が境界線?
指の先の先の先、はもう貴方ではなくて私なのではないか?

愛し過ぎるとひとつになりたいと願う。
愛する人を失うのは嫌。
頭から爪の先まで溶けて混じればいいのに、と思う。
こんなにも同じようなこと考えて同じような行動しているのなら、
いっそのこと私達は同じ個体であればいい?

でも矢張り。

私は貴方に出逢いたかった。
顔を見て声を聞いて好きだなぁ、と感じたかった。
手を繋ぎたかった。
キスをしたかった。
抱き合いたかった。

違うから同じが見える。
同じなら見えない、こと、もの。


貴方を好きな一個体でありたい。

ひとりずつのふたりで生きて愛し合いたい。


未詩・独白 ふたりがひとつだったなら Copyright 朽木 裕 2006-12-04 23:38:31
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