REAL GHOST(晴れた幽霊)
大村 浩一
ぼくたちは肉体をなくして意志だけで生きている
−吉本隆明詩集『転位のための十篇』収録
『絶望から過酷へ』より−
けさは
かるい
ひとの
千の思いも
これいじょう
ひどいことは
おきない
ひとの
千の言葉は
かるい
(けさは
かるい
ひとの
千の思いも)
(9月のあとさき
かなしいことは
ずっとつづいていて
けれどぼくは
死んでしまっているから
これいじょう
ひどいことは
おきない
ひとの
千の言葉は
かるい)
誰にも
こないでほしい
みたいなことを手紙には
書いて
すべては あっちに
うっちゃってきた
(IDも
口座も消した
これで黙ればぼくは
居ないもおなじ)
昨夜はね
誰も居ない台所で
幽霊のたてる物音を
きいていた
(パキーン)
(がたがたがたがた)
そんな
ぎそう
ぎたい(そう、)
ぼくが生きてるふりをするために
そんなことしてやる理由は
ひとつもないんだけど
(かまえると
つかれるよ
きみ)
けさは
かるい
い た み も
ぼくは
ほろびる
ぼくにいたる
千の言葉も
やがて
いつか
めざめることができた
自分を
けさは抱きしめて
初稿 2001/07/03
改稿 2004/03/29