かぶとむし
吉田ぐんじょう
街灯の並んだ道を
一匹のかぶとむしが
低空飛行して進んでゆく
信号か何かの
赤い光を受けて
目玉も背中も
海老のようにぴかぴかしている
かぶとむしは
曲がり角で
ゆっくり消えてゆくようにして
見えなくなった
そういう夢を見た
明くる日の朝刊に小さく
高校生二人乗りバイク
石塀に激突し死亡
原因は信号無視
のニュースが載っていた
二つ並んだ18と云う数字は
なんだか切ない形をしていて
凝視せずにはいられなかった
寒い朝だった
自由詩
かぶとむし
Copyright
吉田ぐんじょう
2006-12-04 18:15:11