グランドキャニオン
石畑由紀子


視界に広がるこれまでが
あまりに深いので
私たちはすくみながら頂に立ち
いつの間にか手を繋いでいた


あの層を一枚一枚剥がしてゆけば
私たちがいつか手放した大切なものに
また会えるかもしれない


頭上に
肩に、足元に
この瞬間にも降り積もってゆくものがなにかを知っているか
私たちもいずれ
層になる、その時
頂に立つ者にとって私たちは
一体なんだろう


降り積もる
静かに
時間をかけて
降り積もる


これまでとこれからのはざまで
強風が吹き荒れるので
私たちもいっそう強く手を繋いだ





自由詩 グランドキャニオン Copyright 石畑由紀子 2004-03-29 01:45:59
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