冬の窓
石瀬琳々
ほらこんな風に
指と指で窓をつくる
その空間に映し出されるのは
きっといつか見た事のある
冷たく水を湛えた青い空
耳をそばだてて そして
聞くのはなつかしい声
冬から冬へと渡ってくる
あれは白鳥という名の淋しい鳥
美しい編隊を組み
けれど 壊れた楽器のように
啼いている 呼んでいる
ここへおいでと
そこから出ておいでと
啼いている 呼んでいる
遠いはるかな水面には
凍えた指先は届かない
せめてこの窓をひらいて
燃える心を冬へつれていけ
白い鳥たちの軌跡のあとに
風も動かない
静かな枯木立の梢に
からからと朽葉が鳴るだけの
寒い朝