冬の窓
石瀬琳々

ほらこんな風に
指と指で窓をつくる
その空間に映し出されるのは
きっといつか見た事のある
冷たく水をたたえた青い空
耳をそばだてて そして
聞くのはなつかしい声
冬から冬へと渡ってくる
あれは白鳥という名の淋しい鳥
美しい編隊を組み
けれど 壊れた楽器のように
啼いている 呼んでいる
ここへおいでと
そこから出ておいでと


啼いている 呼んでいる
遠いはるかな水面みずおもてには
凍えた指先は届かない
せめてこの窓をひらいて
燃える心を冬へつれていけ
白い鳥たちの軌跡のあとに
風も動かない
静かな枯木立の梢に
からからと朽葉が鳴るだけの
寒い朝


自由詩 冬の窓 Copyright 石瀬琳々 2006-12-01 16:20:37
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