二塁ベースの経験
カンチェルスキス



 昨日のうちに決めたことを翌日実行するのが
 正しい人間である
 その前に発表しなければならない
 私は人間である
 ドラ焼き型ロボットでもなければ
 餡子抜きドラ焼き型ロボットでもない
 ロシアンルーレット風ドラ焼き型ロボットでもなければ
 面倒臭いのである
 早い話である
 早すぎてたまに忘れるぐらいである
 私は人間である
 その人間である私が昨日決意したのは
 各草野球会場においてバッターボックスに立ったならば
 ヒットを打たなくとも
 ピッチャーの横を走り抜けて
 二塁ベースに全力で突っ込むことである
 私は無類の二塁好きなのである
 好きなところに真っ先に向かうのが
 いちばん心にいいのである
 次の打者がホームランを打っても
 私はずっとそこにいるのである
 ホームラン走者など一塁ベースでもかわいがってればいいのである
 自宅の枕も二塁ベースなのである
 体重計も二塁ベースなのである
 ついつい気持ちよくなって
 半日はそこに立っているのである
 女房は本塁が好きなようである
 なんか家みたいな感じがするからとは
 女房の戯言である
 うちのセントバーナードちゃんは
 三塁ベースを骨の代わりに齧っているのである
 いい光景なのである
 一塁ベースは引っ越しのときに前の部屋に
 忘れたままである
 おそらく引っ越し屋の兄ちゃんが
 一塁ベースをダシに婦女子をナンパしてるのである
 一塁ベースなんてどうでもいいのである
 私は二塁ベースが無類に好きなのである
 今日からの各草野球会場において
 ヒットを打たなくとも二塁ベースに突っ込む輩がいたら
 それは私である
 そこから動かない野郎がいたら
 それは私である
 人間である
 正しい人間である
 選挙に出るのである
 使い捨てカイロのような一票を
 政治の知識も
 野球の経験もゼロなのである
 二塁ベースの経験だけ豊富なのである
 


 




自由詩 二塁ベースの経験 Copyright カンチェルスキス 2004-03-28 20:55:42
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