嫉妬する拳銃
はらだまさる

   1

ビ・バップが
ハード・バップに移行するように
文字は飢えを凌ぐように増殖し続けて
マイルスが観客に背を向けるように
日本語を詭弁でひっくり返してゆくが
そこには表も裏も権力がぴったりと張り付いていて
武器なのか鎧なのか呪文なのか知らないけれど
冷感症的な高い教養を持つマザー・ファッカーは
その教養をデュオニオス的にも役立てられず
理論武装と自己弁護に帰着する輩ばかりで
傷つく事に過敏に怯えては人を傷つけ
簡単に裏切るくせに裏切られたら墓場までとは
どこまで自分勝手で子供染みてるのか
そんな奴が詩人なら詩人なんか
糞味噌の役にもたたねぇよ
ギザギザハートの子守唄

明日は我が身、
嫉妬する拳銃を撃ちまくる
テクノ・ドロップス


    2

それにしても
このコーヒーに
どろどろと沈殿するミルク
私は詩人などこれっぽっちも信じていないよ
詩人など信じる方が間抜けだ
詩人など疑われてこそ
その存在価値があるのだ
詩人は欺瞞を欺瞞として承認する
薄っぺらな紙に描かれたカメレオンに如かない
それは生き残るための
ぎりぎりの選択

彼等の天才的な
ぬるい憐憫と更にぬるい嘲笑に
真剣に向き合うことは
あまりに危険だ

詩人の言葉に惑わされてはいけない
詩人を疑え

詩人は個人ではなく全体だ
乱れた人類の舞踏だ

ミルクが叫んでいるけれど
詩はそこにない


    3

とことと
とこっとと
とこっこ
ととと

とことと
とこっとと
とこっこ
ととと

巨大なカエルに
のみこまれたゾウさん

とことと
とこっとと
とこっこ
ととと

スキップしてる
野蛮な四つ打ちのリズム
世界の終焉


    4

ブルーとグリーン
水玉の音楽
甘い狂気
シークレット・
オブ・デザートが匂う
墓場の下の
墓場エレクトロニカ


    5

日本熊森協会が
未来をしっかりと歩いている
割り箸を使わずに木を植えている人々がいる
詩人は本の上で胡坐をかいて
プラスティックのドーナツを食べている
感謝できない役立たずの天才は
ただの馬鹿だ、どうしようもない阿呆だ
気味が悪い現実の崖の上
詩人達の愛なんて
白痴の戯言だ
撃ち殺せ

恥じらいもなく
浮遊する自己陶酔と
コンデンスミルクにチョコを浸して食む
吐き気のするぶくぶくに太った
白いぬめった眼と呼吸
撃ち殺せ

それでも詩を描こうじゃないか

貴様の中で
乾燥しきった黴に
もう一度湿りを

黴を救え

苔生す森を
町を


終わらない地平を






自由詩 嫉妬する拳銃 Copyright はらだまさる 2006-11-30 13:36:11
notebook Home