高い平原
霜天

時々には、迷ってしまう


何もないままに、辿り着いてしまうこともある
戸惑いを超えると、水平になれるらしい
幾重にも繋がっていく扉を間違えてしまった君が見るのは
ビルの谷間に引っかかった
高い、高い平原


そこに行かなければ分からないこと
二十五番目の扉を(間違えて)開けた君がいるのは
二十六、と名付けられた街
大きな川がとても似合っていたって
相変らず引っかかったままの平原は
飛んでいく空の鳥みたいだった、って
ただ一本だけの道を、信じることもなく進んでいけば
二十七、に辿り着くのかもしれないし
そこで終わっているのかもしれない


君が言うには
あの日プラットホームで抱き合っていた恋人たちは
辿り着いてしまった後のかたち、なんだそうだ
扉を開けて、(間違っていたにしても)そこに立って見る夢は
綺麗な色をしている、らしい
まるで経験したことのように君は言う、ので



雨の後で
川の色がとても鮮やかだ
いつか息継ぎを忘れた子供たちが
振り返りもせずに泳いでいったこと
目を開けた水底では、どんな景色が見えただろう



ビルの谷間に引っかかった
高い、高い平原
揺り籠みたいだ、と呟くと
おやすみなさい、と君が出て行く
手紙を書いてみようと思う
二十四、の街の空は
今日もこんなに綺麗です、と


自由詩 高い平原 Copyright 霜天 2006-11-26 01:54:34
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