「山小屋」
プテラノドン

 一人ぼっちで 山小屋で過ごす 夜ってやつは恐ろしい。
 眠りにつくまであと少し。そこでまた再開するように
口火を切ったのは流れ星。真っ先に迎撃されたのは
真っ赤な唇―、吐き出された白い吐息は男のひげを凍らせた。
だから、鎖につながれていた数匹の犬たちは、そのまま
ソリを引っ張ることができた。そして、庭先で
月明かりに浸された斧は「距離をはかるために窓があるというなら
叩き割らなくてはならない」と、アザラシの牙を口にはめた
エスキモー達の言い伝えを唱えた。
 男はもう何日も、彼女と会っていない。窓際に立つ女は、
ガラスの破片で髪を梳かしている。彼女の足元には、
山のようにかさなった髪の毛。その頂上から彼女は
男を見下ろしている。エベレストよりも高いのだ。



自由詩 「山小屋」 Copyright プテラノドン 2006-11-23 02:09:28
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