言葉が泣いている
ぽえむ君

大きな本屋の片隅で
店員にも忘れられてしまった本が一冊
置かれた場所が奥にあるのか
興味を惹かない題名なのか
本に聞いてもわからない

言葉がこんなに近くとあるというのに
誰もが前を通り去ってゆく
いつも静かなその棚は
言葉でこんなに多くを語っているというのに
表紙すら見られることなく
一日一日が過ぎてゆく

ある日
誰もが忘れていたその本に
手を差しのべる人がいた
心が渇き疲れ果てたその人は
その本の言葉の涙から
潤いと勇気を与えられ
その言葉の涙は
その人の涙へと
伝わっていゆく

そしてその時から
その言葉の涙は
別の涙へと
変わってゆく


自由詩 言葉が泣いている Copyright ぽえむ君 2006-11-20 22:59:31
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