言葉が泣いている
ぽえむ君
大きな本屋の片隅で
店員にも忘れられてしまった本が一冊
置かれた場所が奥にあるのか
興味を惹かない題名なのか
本に聞いてもわからない
言葉がこんなに近くとあるというのに
誰もが前を通り去ってゆく
いつも静かなその棚は
言葉でこんなに多くを語っているというのに
表紙すら見られることなく
一日一日が過ぎてゆく
ある日
誰もが忘れていたその本に
手を差しのべる人がいた
心が渇き疲れ果てたその人は
その本の言葉の涙から
潤いと勇気を与えられ
その言葉の涙は
その人の涙へと
伝わっていゆく
そしてその時から
その言葉の涙は
別の涙へと
変わってゆく