セミの抜け殻パズル
たたたろろろろ

ルーペを通るまっすぐに屈折した彼の意識。まなざし。
はん。ぼくはその焦点にもぐりこむ。
なんだよ。目が合う。彼のおおきくなった目、歪んで。
ぼくは彼が、今日の彼がいやだった。気持ちが悪い。
夕陽を背中に受けて、逆光なのに、
はっきりした笑顔で。ぼくの家に遊びにきた彼が。
「これのパズルをおれたちで完成させるんだ」
ルーペが机に、こん、と置かれて、
ぼくは黙って複雑な動きをする彼の指を見ていた。
セミの抜け殻が完成に向かってゆく、ように見える。
正確な完成なんてありえないよ。思い込みだよ。
いやに、彼の目がきらきらして。それがいやだ。
いじわるな気持ちになってしまう。


自由詩 セミの抜け殻パズル Copyright たたたろろろろ 2006-11-20 03:06:59
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