夏草のオーガズム
ピクルス


囁く水の招きに
おとなしくなってゆく
たのしい夢をみて
かなしい夢もみて
ちっとも貧しくならないから
誰にも聞こえないように小さな声で
誰にも聞かれないように大きな声で

蜂蜜みたいに三日月
バナナボート揺られて
次第に淡くなってゆく
いやしいカラダは小さくて
さよなら
とは云えずに
ただ頷いていた
遠ざかってゆく夏も
近づいてくる夏も
静かに静かにしているよ
くるしめた言葉は
花を添えて無人島に埋めよう
晴れた日に
風は吹いて
その
強い強い風に
くらくらしながら
電信柱にもたれてる

たくさんたくさんたくさんの
影踏みをして
狂ったように
ぴょんぴょん跳ねて
わずらってはいない
ピアノのトリルが流れて
深海のような空に漂う
もう言葉は風でしかない
喘ぎながら繰り返そうとする
隙間を埋める声ではなく

またねまたね
転びそうになりながら
走ってゆく
懐かしい顔は
何処にもないから捜さない
僕等は欠伸ばかりで
なかよく座って
僕等は胸を焦がしながら歌った
いつまでもいつまでも歌った




自由詩 夏草のオーガズム Copyright ピクルス 2006-11-20 00:49:36
notebook Home 戻る