ビートルズの曲は
たいていタイトル部分しか
歌詞がわからなくて
あとはみんなホニャラ〜とごまかして歌う
これ日本の法則

で終わろうとしたテレビ側が
最後にインタビューしたのは
くたびれたグレーのスーツ姿で書類カバンを持った
冴えない小太りのおっさんで
イエスタディをフルコーラスで歌ったあと
取材現場に近い楽器屋で
ギターを借りて今度はミッシェルを弾き語りし
あぃらびゅー　あぃらびゅー　あぃらびゅー
ざっつわいらぃうぉんちゅせいー
眉間に皺をよせながら肩をすくめ
惜しげもなく愛を歌い
周りから拍手喝采を浴びて
得意げに胸をそらせて笑ったあと
再びさっきのおっさんに戻って通りを去っていった
くたびれたスーツの後ろ姿をカメラが見送る

おっさんはかつて
五人目のビートルズだった
会話も途絶えて久しい息子との関係が
突然復活したり
妻のことを　おい、じゃなく名前で呼んでいた
若かりし頃を思い出したり
そんな愛すべきおっさんが
日本には山ほどいるのだ
これ　私が思う
日本の法則