「 桜のまえに 」
椎名

ぼたぼたと
ぼたん雪が降る
ふわふわと
わた雪が降る
暖かい日が続き
このまま春になるかと思えた後に

急ぎすぎた春が
慌てて後ずさりするかのように

灰色の空から
あとからあとから
舞い降りる雪
大地を濡らし
木々や屋根を白く塗りつぶし
そうして
陽も差さないのに
溶けていった

あの雪は
春から冬へのお詫びの言葉
ちょっと早すぎたね
まだ冬のお別れの途中だったね

なんだか
そう言っているような
そんな
雪だった



自由詩 「 桜のまえに 」 Copyright 椎名 2004-03-25 06:47:40
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