虫かご
蒼木りん

虫かごを洗う

卵は
土に埋める

来年は
除草剤を撒かない

どこの家も
子どもも男もどっかにいって
いないから
午前中の住宅街は奇跡的に静か

洗濯物のカアテンで
部屋を隠して
馴れ合わない天国をさまよう

向かいの家のおんなと
わたしは
生き方がちがう

愛しかたって
教えられない

暮らしかたって
選んでいくもの

彼方の
望むようなおんなにも人間にもなれない
真似事はできても

自分の始末は
自分でしましょう
大人でしょう

わたしは
少しなら手伝えます
少しなら

お金で潤う気持ちがある
尽せば晴れる気もある

わたし
あと何年したら
一人気ままな部屋で暮らせるだろう
自分の世話だけして

あんなに
穏やかな秋晴れだったのに
冬雲が空を覆う

虫かごの虫は
いつか死に絶えて
忘れ去られたから

わたしひとり
残された休日に葬る
過ぎた気がかりの想い




未詩・独白 虫かご Copyright 蒼木りん 2006-11-16 23:03:24
notebook Home 戻る  過去 未来