スロウ ワルツ
ウデラコウ

凛とした空気の中
唯一の色が 始まり行く姿に
一度だけ背筋を伸ばして 僕は
ワンフレーズのみメロディを口ずさむ

宵の終わりに 見たワルツ

三拍子の一拍目

誰も知らない 似て非なるものが混ざり合う瞬間


三倍速で過ぎ行く人の波を抜けて
隅の隅で 命を繋ぐ
喧騒を謝絶して
耳の奥に微か響く ワルツを聴き取る

思い出にはならない 架空の音色

三拍子の二拍目

贋物の愛に 真実が涙でいろをつけた


暗闇に溶けた道標は そのまま探し出さないことにしよう
まやかしの中に一つだけ 微かに呼吸するワルツを見つけた

それは獣の声に 些か近い

三拍子の三拍目

誰もが終わりだと告げても あの人から言われなければ信じないわと
女は狂い 終焉は静かなハヴァーヌとなった



スロウ ワルツ

スロウ ワルツ



僕は永遠に三拍子の中に 不恰好なおたまじゃくしを 並べ続ける



いつの日か全休符を置くことを 赦される その時まで



僕は酷く真剣で それ故に滑稽なワルツを 奏で続ける



自由詩 スロウ ワルツ Copyright ウデラコウ 2006-11-14 20:53:19
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