移民
水在らあらあ






なあ今日は
おまえが好きな
政治的なバーはよそうよ
そっちのほうがビール安いし
人々もいいけど
外国の刑務所に拉致されてもどってこれない
バスクの革命家たちの写真を見るのは
つらいんだ
だから
60年70年代のロックばっかりかける
あのブコウスキーってバーに行って遊ぼう
そんなにすきじゃないけどさ
ブコウスキー自体は
もうすぐ
もうすぐだよ
おまえはあの広い家で
一人になるから
マリアンがくれるって言ってた
子猫もらいなよ
そうしたら少しでも
おまえはさみしくないだろうから
ミミと尻尾だけ灰色の
おかしな猫さ
ごめん
ごめんね
でも
しかたないんだ
おれはまだ半分向こうの人間だから
ほら
月も
でている


体を
大切にね
特に俺の好きな
おまえのおしり
よく歩いて
きれいにするんだよ
おまえの髪は
おまえが梳かすんだよ
イビサ島のあいつから安く買った
アボリジニーの櫛で
頭をマッサージしながら
俺がいつも
するように
おまえの肌を
北から南に
旅していた俺の指は
いなくなっちまうから
自分でなでるんだよ
ほら
月も
泣いている


今年は一緒に帰るっていってたのに
なんだよ
俺の父親もおまえに会いたがっていた
いや、どっちかっていうと妹さんに会いたがっていた
きれいな妹によろしくね
おまえと仲がよすぎて俺とは
いろいろあったけど
しばらくおまえは彼女と一緒だ


それにしても
今夜は恋人同士のくちづけばかりが目立つわ
なあ
月も 
見ている


もうだいたい
なにが善くて何が悪くって
何が本当でなにが間違っているか
分っているのにね
何で俺たちはいつも
流されてゆくんだろうね
悪いことや
間違っていることばかりして
いや
こんな曲じゃ
おどれないぜ
おまえはどんな曲でも
おどりたがるから
ほら
月も
笑っている


純粋さと バラと 涙と
おまえは今夜はきれいだ
そこで休んでいたいのに
ずっとずっと休んでいたいのに
あたたかい
あたたかい
おまえの
底で


おまえのあたたかさが
とおのいてゆくよ
おまえのやさしさだって
いたいばっかりだ
ああ
酔っ払ったよ
もう鼻水も涙も
とまりゃしない
ああ
月だって
隠れちゃった


真夜中に
朝日がさしたら
俺が狂うときだ
だから
おまえはきれいなままで
そのさびた金色の髪に
太陽のにおいしかしない
金色の髪に


ほら
月も
闇を
おまえと俺の闇を

妬いている



















自由詩 移民 Copyright 水在らあらあ 2006-11-14 00:44:00
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