錆びた電車で
ふるる

みどりいろの切符を買って錆びた電車に乗りましょう
髪にすみ家を作っている鳥は「火ぃや、火ぃや」と鳴きますので
火が欲しいのでしょうね
さむいのでしょうね昨日しとしとと降る
                  雨水で
髪を洗ったのでそれでさむいのでしょうね

「火ぃや、火ぃや」

そんなに鳴くとお前、自慢のつばさが赤くあかく縮れてしまうのに

みどりいろの切符を買って錆びた電車の窓からは
山々が見えますがあれは湖に写らない山、まぼろしの・・・・・・・

「火ぃや、火ぃや」

あの山、何年も前に噴火しててっぺんは今も煙につつまれています
溶岩はうつくしかったでしょうね
お前はどう思う
真っ赤で熱いものが
お水のように山を滑り落ちて行くところはどんなだったかしら

いつかこの冷えた手でお水をすくったことがあったでしょうね

お水を手で

思い出せません思い出さない方がよいのでしょう
髪は燃えました
山も燃えました
木も
水も
虫たちも

わたくしの手はみどりいろに貼りついてしまいました、
わたくしの髪は赤く縮れました、
わたくしの空は彼方までよく燃えています、
わたくしの切符はみどりいろ、みどりいろで、
みどりいろの切符は手に貼りついて取れません、
わたくしの鳥はたいへんよい声で鳴きます、
わたくしの髪を冷たい雨水はつたっています、
わたくしたちの手はいつまでもいつまでも山々を求めてさまよいます

錆びた電車に揺られながら
ずうっと向こうの車両から
車掌さんが来ました

窓の外をゆびさしました

窓の外は

          夜

お星さまたちがいっせいにぺかぺかと光って
それはそれはきれいできれいできらきらとしているので

冷たい窓も少しぬるみ
わたくしは少しまどろみます、


お前はどう思う
この手にある小さなみどりいろの

               芽ぶき




自由詩 錆びた電車で Copyright ふるる 2006-11-13 14:04:56
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****印象詩っぽい*****