ブゥー
大覚アキラ
久しぶりに実家に帰って
久しぶりに会った父は
ずいぶん小さく見えた
もともと口数の少ない人だったが
いっそう無口になっていて
母が買い物に出かけてしまうと
これといって話すこともなく
ぼくと父は
ダイニングテーブルに二人
向かい合って座って
グラスに注いだビールを
黙って飲んでいた
苦い沈黙をビールと一緒に
胃に流し込みながら
話のきっかけを探していると
父がオナラをした
間の抜けたその音が
あまりにもおかしくて
二人で顔を見合わせて笑った
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愛みたいなもの。