音の構成で詩の印象を説明してみる
青色銀河団

言葉には、意味と別に音そのものがもたらす印象があります。
例えば「こんにちは」は明るく強い印象なのに対し「さようなら」はやさしい印象を与えるといった具合にです。
そこで、音のもつ印象を独断で分類して提示しますと、「か行・た行・濁音・半濁音」は明るく強い印象を、「さ行・な行・ま行・や行・ら行」はやさしく弱い印象を与えると思います。残りの「あ行・は行・わ行」は中立の印象です。
これらをここでは仮に強音・弱音・中立音と呼ぶことにします。
すると先ほどの「こんにちは」は強音2中立音2弱音1で構成され、「さようなら」は弱音4中立音1で構成されていることになります。
こういう音の構成がことばのもつ印象をある程度決定していると思います。

詩の印象も、音の構成を分析することで、ある程度は説明することができそうな気がします。
そこで無謀にもやってみました。ネットで探すと漢字をひらがなに変換してくれるソフトhttp://kids.knowledgewing.com/index.htmlがありましたので、あとはエクセルで簡単なマクロを書いてひらがな毎の文字数をカウントしました。以下の結果にはタイトルと作者名も含まれています。なお、手抜きでカタカナ・英字はカウントしておりません。

佐野 権太 さん 「クジラになった少年」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=88947
総音数 610音
あ行 16.1%
か行 10.3%
さ行 8.9%
た行 11.8%
な行 11.5%
は行 3.9%
ま行 8.2%
や行 2.1%
ら行 7.5%
わ行 6.1%
が行 4.3%
ざ行 3.4%
だ行 2.8%
ば行 2.6%
ぱ行 0.5%
中立 26.1%
強音 35.7%
弱音 38.2%


緑川 ぴの さん 「永遠ということ」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=89755
総音数 397音
あ行 13.6%
か行 13.4%
さ行 7.6%
た行 14.1%
な行 12.6%
は行 6.0%
ま行 7.8%
や行 3.0%
ら行 6.3%
わ行 6.0%
が行 2.5%
ざ行 1.0%
だ行 4.8%
ば行 1.0%
ぱ行 0.3%
中立 25.7%
強音 37.0%
弱音 37.3%

水在らあらあ さん 「子羊」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=89588
総音数 1211音
あ行 16.6%
か行 11.8%
さ行 6.9%
た行 14.4%
な行 11.7%
は行 3.8%
ま行 6.1%
や行 1.5%
ら行 7.7%
わ行 5.9%
が行 2.5%
ざ行 2.6%
だ行 5.7%
ば行 2.5%
ぱ行 0.2%
中立 26.3%
強音 39.7%
弱音 33.9%

前田ふむふむ さん 「森の夢―古いボート」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=90216
総音数 1032音
あ行 14.1%
か行 11.3%
さ行 7.5%
た行 10.3%
な行 10.5%
は行 4.0%
ま行 9.7%
や行 4.4%
ら行 10.4%
わ行 6.8%
が行 4.5%
ざ行 3.2%
だ行 2.2%
ば行 1.4%
ぱ行 0.0%
中立 24.8%
強音 32.8%
弱音 42.3%


という結果になりました。
いろいろな解釈が成り立つと思いますが、予想していたよりあまり差がでなかったなというのが実感です。
それでも特徴をいくつか挙げることができると思います。

まず佐野 権太 さんの「クジラになった少年」は、弱音の構成比率が38.2%と比較的高く詩の内容と同じようにやさしい音の構成になっているのではないかと思います。

緑川 ぴの さんの「永遠ということ」は強音37.0%と弱音37.3%とが拮抗しているのが特徴だと思います。詩の内容からはどちらかというと強い調子を受けたのですが、ちゃんと語感のバランスが考慮されているんだなあと改めて感じ入りました。

水在らあらあ さんの「子羊」。4作品の中で唯一強音が39.7%と弱音の33.9%を上回っています。この強い調子が歯切れのよい短いセンテンスと相まって、詩のもつ怒りとも悲しみともとれる独特の印象を作っているように思います。

前田ふむふむ さんの「森の夢―古いボート」。強音32.8%弱音42.3%。つよい語調を避けやさしい音を何重にも重ねることで、幻想的で叙情的な雰囲気を作り上げることに成功していると思います。



独断と偏見で勝手に作品に対する感想を述べてしまいました。もしお気にさわるようでしたら申し訳ございません。

時間がかかった割には当たり前のことしか言えなかったのですが、
これを機会にもうちょっといろいろ研究してみようと思います。
駄文を最後までお読みいただきありがとうございました。






散文(批評随筆小説等) 音の構成で詩の印象を説明してみる Copyright 青色銀河団 2006-10-28 21:43:09
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