ユリネプララの人
青山スイ

ラジオをつけると
聞いたことのある曲が流れていて
愛とか希望とか自由とか
そういったことを叫んでいた

壁に掛けてある絵は
何の絵であるのか解らなかった
右下の隅に小さな文字で
ユリネプララ、と書いてあった

あの子は赤いスクーターに乗っていて
雨の日が傘を差すのが好きで
夢を人前で語るのが苦手で
儚いものを大切にしていた

思い出せることは断片的で
確実にピースの数が足りなかった
なんとか映像にしてみたが
その映像には顔と名前がなかった

あの子が僕にくれたモノは
ユリネプララの絵と
少しばかりの記憶だった
サヨナラは言わなかった

窓の隙間から
柔らかな風が通り抜け
カーテンは何も言わず
心地よさそうに揺れた

ラジオからは
あの子が好きだった曲が流れていて
愛とか希望とか自由とか
そういったことを叫んでいた


自由詩 ユリネプララの人 Copyright 青山スイ 2006-10-28 19:53:35
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