クレヨンの朝
青色銀河団

*
ぼくの町ではさあ
エプロンについた醤油のしみまでが神々しく輝くんだ。
- 朝 -
そいつを封筒につめてだな
なんにも書いてない便箋一枚
一緒にいれて。
灰色した丘のうえのポストまでまいにち投函しに行くんだ。
そうするとね
約束の日までにはきっと
やさしい泡みたいな返事が返ってくるよ。
わかるんだよ。
じぶんだけにね。
神様がしみわたるように語りかけてくれる朝がかならず訪れる。
ほんとだよ。





*
詩は生まれません。
いじわるな天使から君への伝言です。






*
ぼくに思い出はありません。
ぼくは机を叩いて嗚咽しません。
ぼくは愛する人の前で泣いたりしません。
ぼくは絶対泣いたりしません。
ぼくに思い出はありません。





*
海は受胎し
海はうまれる
永遠のくりかえし
風の季節は終わらない





*
十三歳の結婚式

音楽室のオルガン。
花壇のブーケ。






*
わたしは
花さく野邊のなかで
じっと動かずにいる
一匹の蛙です


やわらかな風に
運ばれてゆく
たんぽぽの綿毛にぶらさがった
小さな種子は
わたしです


水の跳ねる音がする
草に覆われ
すでに
使われなくなって久しい
トンネルは
わたしです


役目を終え
西の空で
ただ白く小さく
輝いているだけの人工衛星は
わたしなのです



自由詩 クレヨンの朝 Copyright 青色銀河団 2006-10-24 22:01:54
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