野原
あおば

なにも知らないふりして
黙って下を向いて
箸を手に取り
黙々と食べていると
見たこともない
アホウドリの影が
急降下して
隣家の大屋根が
まっぷたつに割れる
ガラガラと瓦が落ちる
ガラガラ、ガラガラ
カラ カラ ことん
一枚残らず落下して
屋根は
のっぺらぼうになった

鬼瓦も失って
風通しが良くなった
大屋根の急斜面を
生まれてきたばかりの
子供たちを
遊ばせている

きゃっきゃっ、言う声が
青空に反射して
日の光とストレートに
落下して
隅々を明るく照らし
大人しい
座敷童の顔を明らかにして
これから学校に行って参りますと
言わせて
帽子を被り
座敷童は
見えない鞄を肩に
裏口から路地を抜ける
風に跨って
何処かに飛んだ
横町の明るい午後

なにも分からないふりをして
黙って下を向いて
ぱくぱく御飯を頂いた
黒いカラスの影が
急降下して
隣家の塀を真っ二つにした
手抜き工事のブロック塀は
ガラガラと脆く崩れた
風通しの良くなった庭に
カラスが三羽
偉そうに突っ立って
見たことのある
野原の虚像が見えた。









自由詩 野原 Copyright あおば 2006-10-22 00:28:35
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