蚕食の図
よつやとうじ

常にあかく
トマトを塗る
あついあつい日々が続き

想い出ゼリーが
ひんやり揺れる
縁側の空気は
うとうとと流れる

小さな匙ですくうと
淡い成分が口の
中で優しいのに

迷いスズメバチが
黄桃に停まる頃
あなたはもうせんごけに
虻を与え

その瞬間に池の
鯉はゆっくりと
宙に浮き上がり
またゆっくり
と消え失せた

わたしはその音を
目で探したけれど
何かが素早く
持ち去った後で
どれだけ待っても
見つからない

そんな折りもまた
頬をつたいぽつり落ち
辿り着いた音で
我に帰る


自由詩 蚕食の図 Copyright よつやとうじ 2004-03-19 00:13:29
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