君が消えたあとの闇
atsuchan69

遠く、波の音が消えたあとの闇にまぎれて
ただ疲れて坐る君はまだ 何処か子供で
覚えたての歌を ぎこちなく口ずさんでは、
助手席で夢見るように話す「ポリアモリーの街
つまりファッションや音楽、インテリアの類だろ?

ポルポトもナチスも知らずに 咥える、タバコ
それを無理やり奪って「ベトコンって知ってる?
――彼女は首をふり、「ベッドで合コン?
((( 笑いながら クルマはETCのゲートを通過する夜更け
フランス人形みたいに化粧した少女の放つ フレグランス
花の匂い、風のゆらぎ 瞬く瞳に映るのは
信号待ちで垣間見たショー‐ウィンドウのマネキン

午前2時を過ぎて走り出すのは、夜更かし少年のワガママ
記憶を載せて 自由を載せて 気侭に走る「大人の街、ミナミ
鮮烈な、眠れる森の少女の描く お伽話の恋。

さらさらと愛が散る 黄色い並木道のつづく御堂筋

濃縮サルビアの旅路はいつもきまって アメ村をぐるぐる
クスリ売りの黒人ボビーよ、「北極星のオムライス食わんかい!
「法善寺横丁の喝どん食わんかい!

生意気な根性なしの黒服が 俺に出くわす迄の粋がり
おびえた愛欲に対価をはらう女給たちの履く なぜか高いヒール
夢に酔った者たちの乱れた足取り、宗右衛門町の雑踏
キリンプラザ前のバスキング 戎橋をわたる人の素通り
蟹のオブジェの蠢きもなく、斜め正面のテレビスクリーンは闇。

堺筋の渋滞とタクシーの列、闊歩する生活破綻者ども

「日本を離れて、暫くヴェネツィアで暮らすの
「さよか。えええやんか、自分。ごっつ格好ええわ

船場からふたたび御堂筋へ・・・・
「着いたで、
喫茶サザンクロスをやや行過ぎて停まるジャガーXK

「貴方は誰なのかしら。そしてもう逢えないの?
東京育ちだと自称する少女は降り立って運転席を覗く
「二度と逢われへん、俺は今だけのヤンチャな男やし、
いつか地獄の季節に・・・・それまで君が待っとったら別やけど
――ほな。行くわ、さいなら。

君が消えたあとの闇が、たちまち襲う
ああ、一方通行のためUターンも出来やしない!


自由詩 君が消えたあとの闇 Copyright atsuchan69 2006-10-20 12:48:22
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