流砂の凍え
atsuchan69

残光に霞んだ視覚が荒い砂粒に吹き払われる
芥の幻が、埋没した歴史に今も残る「カタチ。
伽羅色に侵食された古代の町が 彼方に浮かぶ
鮮やかな猩々緋の空と砂のミラージュ

陽の沈まぬうちに 亜麻布に包まれた食料を取りだし
虚空に千切り渡す、サンギャーギとチーズ、
近づく闇の背後に いつしか
淡い追憶の匂いが静寂に紛れ、潜んでいた。

悪霊にとり憑かれた女と踊る 「焚き火の炎・・・・

(くれてやった。皇帝の胸飾りにも似た 涙の滴
それが新宿やら六本木の路上で安く売りとばされて
彼女は街を彷徨い、あてどなく夜に沈んでゆく

(使いまわした注射針のかがやきを闇に溶かして
透けたロータスピンクの窓掛けを揺らす風
冷たく浸透する異物に血が騒ぎ、
肉体の冴えわたる声がとめどなく乞う 「許し
すなわち、欲望の抑えきれぬ「素顔

東京から届いたメール

受信され、肌は ざわめき立つ。
「  」・・・・。
(薄い退紅の腐臭がビルの谷間を漂い、
前世紀を想わせる枯れた並木道の途中
街灯に照らされた「歪んだふたつの影が
つかの間、逢瀬のために重なり
たった今、スイートルームのバスタブで賑やかに )))
泡立つシャボンの虹色の油膜に映り、消えた。

やがて凍えるような星空にひびく 歌声
果てしなくつづく 砂の大地に染みる幻聴のアヴェ・マリア
その密かなる声に震えるのは、場所なき者の「漠たる褥(しとね)
――辿りついた涅色の果て


自由詩 流砂の凍え Copyright atsuchan69 2006-10-14 03:42:17
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