夜  こがね
木立 悟




めざめては指に生まれし水かきで午後の終わりを泳ぎゆくひと



ゆきずりの他人の家の軒下に丸く在るもの季を唱うもの



届かない遠い川原に届かない指の軌跡の光あおいで



とどまらぬ明かりではない明かり持ち夜の赤子を育む鈴の手



枕もと辞書のほこりをはらう時ふとひらかれしにくづきの意味



響き果てまた響くほどたおやかに揺れる背を噛む夜の二の腕



音は去りまた音は来て見つめる背ぬれた鱗の熱さ冷たさ



穂をめぐる唱のきんいろ伝わりて光からまる夜の輪の果て











短歌 夜  こがね Copyright 木立 悟 2006-10-12 16:04:31
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