郷愁のカリンニコフ
atsuchan69
斑に染まる山もみじ、
濃くたちこめた秋の匂いに騒ぐ、
枯れ落ちた葉のざわめき
そして悪戯な、
木蔭を這う
下
(
しも
)
風 )))
そうだ哀しみは、
雲ひとつない秋空へと昇ってゆく
どこまでも遠い空の青さに、
少し寂しく、
潤んだ瞳にを声をためて
僕が信じるのは、
哀しみなんかじゃない
ほら、頬をかすめて
爽やかな
颪
(
おろし
)
が奔りぬける
轟々と落ちる、
滝の飛沫に虹を映して
いつか夢見た世界――
君がライ麦のパンを焼く永遠の住まい
死んでしまった人たちがとつぜん帰ってくる
小さな庭先で聴こえる歓びの声たち
二度と散らばらない、
数々のエピソード
細かな溝に針をおとすと、
前世紀の機械が郷愁のメロディを奏ではじめる
たった今、何かが終わろうとしていた
もしも大切な思い出が、
一瞬のうちに壊されてしまっても、
君の笑顔だけは忘れずにいよう
すべては、木々の葉が色づくように移ろい
晴れわたる空へ凛々しく立ち昇っては、
やがて消えてゆく
儚い、幻。なのだから
重い樹脂の円盤がいつまでも回りつづける
君と住む、永遠の部屋の片隅で
自由詩
郷愁のカリンニコフ
Copyright
atsuchan69
2006-10-08 17:38:18
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