わたせない手鏡
木立 悟





あたたかい寝まきです
でも
あたたかいふとんです
おかあさん
頭のほうが寒くて
しんとします


眠ったとたん 朝でした
お昼を食べたら
もう夕ごはん
ふしぎです ふしぎです
考えると寝れません
でも 寝ます


道が川になり
みんな休みになり
ばしゃばしゃうれしいです
いろんなものが流れてきて
またどこかへいきます


小さな庭でした
草はのびほうだい
鳥と葉の影 水の影
いつでも
おとなりの壁にありました


また眠ります
また起きるでしょうか
それとも
眠ったままでしょうか
こわいです
ずっと こわいです


夢のない朝です
おなかがすきます
寝まきを脱ぎます
でも また着ます
肩から下へ
夜になります
たたんだ服から
朝になります


青い青です
雲はみんな
下のほうでつまさき立ちです
おかあさん
鏡台の上の
しまい忘れた化粧品みたいに













自由詩 わたせない手鏡 Copyright 木立 悟 2006-09-29 15:29:20
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