トマトジュース飲んで死のう
しゃしゃり

女にふられたので、
今度のこんどこそ、
この女でなければならない女にふられたので、
トマトジュースを飲んで、死のうと思った。
なんでトマトジュースかといえば、
野菜が足りないと思ったからだ。
完熟トマト十四個分のリコピンだ。
なんだか、
これでもう十分なような気もするじゃないか。
リコピンがどれだけ人生に重要かは知らないが。
友よ。
べつに友じゃないか。
でも友よ。
他にも女はたくさんいるよ、なんて、
なんの慰めにもならないよ。
他に、どんなにいい女が百万人いようとも、
あの女はあの女ひとりだけなのだから。
死んだら灰にして、
海にまいてほしいといったあのこ。
片っ方の子宮を手術で取ってしまったあのこ。
そんなに弱くないですよ、て笑った。
握ったおれの手をはなす間際に、
キュッてもいちど、してくれた。
トマトジュースを飲みながら、
夜のあおい雲をみるのさ。
見ろよ、
友よ、
べつに友じゃないが、
ゆく雲もあんなにはぐれているよ。
おれはもう終わりだ。
こんどこそおしまいだ。
明日なんかこなくていい。
リコピンも一生分補ったともさ。
もうリコピンはいらない。
トマトジュースを飲んで喉が渇くとはどういうことだ。
むしょーに喉が渇くぞ。
近所の定食屋で、生ビールを飲もう。
あそこのしょうが焼きはちょっとしたもんだ。
そして、
帰りに、
にぎわう明るい居酒屋の前の公園で、
ちょっと泣いてから、
帰ろうとおもう。







自由詩 トマトジュース飲んで死のう Copyright しゃしゃり 2006-09-28 20:17:51
notebook Home 戻る