ハッピイ・バースデイ
みい

1. プラス 1

足りないの、1
あたし
レンタルしたビデオだって絶対に
返すのは次の日
でしょ

生理の終わった次の日
きみが
セックスを求めたとして
まだ終わってないこと
にしてしまうし

あともう1日でいいのに、って
毎日願っても
やって来るのは
望んでいない
今日


プラス1。
あたしをもうひとつ
ちょうだいよ

そうやって望んだ日の
あたしはなんだか
消えたり 消えなかったり
てんめつ
していました



2. 銀色

いつも追いかけていた
猫 のなまえは、銀色

毎晩
夢の中で追いかけっこ
してたのに
なぜ
ペットショップなんかにいるの

だって かえないでしょ
8万円もしちゃあ

だから、銀色



3. かえりみち

ああ と息を吐いて
あたしの、まっしろでした

ほらこれって

この暗い世界の
電灯みたい

どうせなら
空気がぜんぶ白ならよかった


携帯がなり続けていて
心地がよかった

電話にはでなかった



4. ハッピイ・バースデイ

きみは
丁寧にドーナッツを
まっぷたつに切ってから
(かしゃん)

あたしの首をわっかでとじた

1本の
ろうそく、
ドーナッツを突き刺して
ちょうど
あたしののどに突き刺して
ぐいぐい、ぐいぐいと
のめり込ませる

さようならは いつも
それほど悲しくはなかったけれど

1人だけ
もう
むかしの人を
思いだしました



5. 指輪

指輪があんまりにきれいでした
ですから、あなたを追っていたのです
つきあって初めて、それが銀色だとわかったとき
あたしは食べてしまいたい衝動に駆られました
はじめてなので、つきあう というのが
どういうことかわからないと言ったあたしに
あなたはこっちへおいでと手招きをし、
あたしのからだを覆って抱きしめて二人で座り
あなたと同じテレビを見ました
なるほど、こういうことかと思ったあたしは
お腹にまわされたあなたの手の銀色を
食べてしまったのですね

あなたはあのときとても怒ったけれど
あたしはやっと今なら謝ることができます

ごめんなさい、
ごめんなさい、


ごめんなさい、



ねえ



6. 少しということ

きみは
少し待っていてと
あたしを家の前で待たせたけれど

あたしのなかの少しというのが
きみにとっての少しよりもっと少しだったのでしょう
3分も待てずに帰りました


あのとき、のどに刺さったろうそくに火をつけ
あたしは目をとじて
あったかあい、と嘘をつき
誰か、とつぶやくと
まっさきにかみさまがきてくれました

プレゼントは何がいい? と
聞いたかみさまに
忘れたと言うと

わらわれました


それからこっそりと


プラス 1。


とささやいて消えてしまったので

耐えきれず
また

あったかあい。

嘘をつきます





未詩・独白 ハッピイ・バースデイ Copyright みい 2004-03-13 00:03:33
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