列島の鵜
杉菜 晃




巌に一列に並んで
暮れなずむ彼方に見入つてゐる鵜よ

さうしてゐれば
見えなくなつていくものが
現れてくるとでもいふやうに
水平線を見据える鵜よ

こんなにもひしひしと迫りくる
暗黒に身を沈めてゐながら
果たして黎明はやつてくるのだらうか

愚直なる鵜よ
けなげに待てば
それでいいといふものではあるまい

ある厳粛な秩序を踏まへないでは
聞かれない
祈りといふものもあらうに

ああ 暗愚なる列島の鵜
身に余る哀しみに身悶える鵜よ





自由詩 列島の鵜 Copyright 杉菜 晃 2006-09-15 19:38:53
notebook Home 戻る