狭い部屋
haniwa

どうも今気づいたのだけれどこの部屋は広すぎるみたいだ
15畳のワンルーム
機能的なキッチンとダブルベッド
持ち服を全部入れても半分くらいのクローゼット
ほとんど空の本棚とオフィスのようなデスク
GE製の冷蔵庫

というわけでドアから二畳ほどの場所に布団を敷き、
クローゼットと本棚を裏返して壁にし、
ガスと水道の元栓を閉め
冷蔵庫の電源を切り
デスクにはプランターを置き
祭りで取ってきた亀を放した

クローゼットと本棚の背版は
表から見たほどじゃないけれどそれでも立派で
ドアを開けると
布団だけがある二畳の部屋ができた

一人で帰ってくれば
すぐに寝るだけ 君がいないから
適当な女の子を連れてきても
すぐに寝るだけ 君じゃないから

ときどき 壁の向こうの暗闇で
亀がごそごそと動き回って
プランターに植えた名前も知らない花は
なんだか懐かしい匂いがする
僕は 君がまだいるのかもしれないと思って

とても幸せな夢を見る
この部屋がふたりの15畳だったころの

目が覚めれば そこは狭い部屋
僕にとてもちょうどいい部屋


自由詩 狭い部屋 Copyright haniwa 2006-09-05 01:21:28
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