黒い海
とうどうせいら

残された わたしは
息をしなければならないと
ごぶごぶと
両腕で水をかきわけながら
溺レル

月も星もない
光なき空の下
コールタールのように
生き物の棲まない
真っ黒い海がうねる 

ここを抜けたら
もっと大きい人間になれると
君は言ったけれど
君のいない世界で
ひとり 大きくなったとして
なんとしよう

かいても かいても
悲しみの波が
涙の渦が
とめどなく押し寄せ
止まらず

幾年月日が流れても
何も変わらぬ自分
気道を塞ぐ
泥のような
粘着質の痛み

まるで
酸の海のようだ
半身をもがれた 傷跡に
群がってくる
蹴っても 蹴っても

いつになったら
終わるのだろう
何故 私だけが
這い上がれないのだろう

何故 消されたのが
君だったのだろう
今 生きているのは
ワタシか君か
どっちなのだろう

生きのびねば
ならないのに
わたしは未だ
息すらつげず
もがいている


未詩・独白 黒い海 Copyright とうどうせいら 2006-09-04 18:17:55
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