赤い雨メスシリンダー
朽木 裕

いつもいつもいつも自分に非があると思って生きてきて
悪くなんかないよ、って不意に頭撫でられたら泣いてしまうでしょう?

どうして君はそんなにも優しいのだろう。
綺麗になりたいと思うよ。
はやく君の心に釣り合うくらい。


傷口はもう痛みを忘れて
けれども傷みは激しくなるばかり。
悼む事なんて出来やしないわ。

だって死んでしまえるわけじゃない。


赤い雨メスシリンダー。


それは血でしょうか、それとも涙、
わけがわからなくて撫でられた頭に君の体温を必死で探した。


偶にね、
分からなくなる。
君と居る私は泣きたいのか笑いたいのか。

きっと両方なんだろうな、
私は小さな命ひとつきり懸けて君の事を愛しているから。

生きていたくて笑っていたくて泣きたくて。


メスシリンダーに溜まる赤い赤い雨。


君の隣りで呼吸がしたい。
それだけの事がどうしてこんなにも難しいのだろう。


生きる事を許してくれた君の隣りで赤い雨メスシリンダー。
目盛りはぼやけて見えなかった。


生きている限り傷口はまた痛み出すけれど
人を誠実に愛する事だって出来る。


生きてさえ、いれば。



赤い雨、血、涙メスシリンダー。



この赤は生きている証。


自由詩 赤い雨メスシリンダー Copyright 朽木 裕 2006-08-29 22:10:20
notebook Home 戻る