赤い雨メスシリンダー
朽木 裕
いつもいつもいつも自分に非があると思って生きてきて
悪くなんかないよ、って不意に頭撫でられたら泣いてしまうでしょう?
どうして君はそんなにも優しいのだろう。
綺麗になりたいと思うよ。
はやく君の心に釣り合うくらい。
傷口はもう痛みを忘れて
けれども傷みは激しくなるばかり。
悼む事なんて出来やしないわ。
だって死んでしまえるわけじゃない。
赤い雨メスシリンダー。
それは血でしょうか、それとも涙、
わけがわからなくて撫でられた頭に君の体温を必死で探した。
偶にね、
分からなくなる。
君と居る私は泣きたいのか笑いたいのか。
きっと両方なんだろうな、
私は小さな命ひとつきり懸けて君の事を愛しているから。
生きていたくて笑っていたくて泣きたくて。
メスシリンダーに溜まる赤い赤い雨。
君の隣りで呼吸がしたい。
それだけの事がどうしてこんなにも難しいのだろう。
生きる事を許してくれた君の隣りで赤い雨メスシリンダー。
目盛りはぼやけて見えなかった。
生きている限り傷口はまた痛み出すけれど
人を誠実に愛する事だって出来る。
生きてさえ、いれば。
赤い雨、血、涙メスシリンダー。
この赤は生きている証。