僕は電車に吸い込まれる振りで 人ごみを掻き分けて逆走するという想像を忘れない
藤原有絵

戦う出で立ちで
挨拶切って 
僕の名前が記された
紙切れを配って回る

相槌のタイミングは重要視していて
ぴりりと緊張さえ走るけれど

親切な笑顔に報いがあるかは
正直わかっていない 未だに

分かるため頭を使って
分かるまで言葉を尽くして
枯渇するまで注ぎ続けるという意志


僕は電車に吸い込まれる振りで
人混みを掻き分けて逆走するという想像を忘れない

勇ましく大手をふって歩く事に
誰かが顔をしかめても

構築される様々なものに紛れて
それも含めて層を成す

やがて絶えるときには
愛する人にさっくりと裂いてもらいたい

千切って
千切って

残痕から
個人情報が漏れないように頼むね




自由詩 僕は電車に吸い込まれる振りで 人ごみを掻き分けて逆走するという想像を忘れない Copyright 藤原有絵 2006-08-27 00:24:11
notebook Home 戻る