月に降る雨
吉岡孝次

光線を照射する角度を
特定すれば
ヒトの衛星にも画は届く
彼らは知らない
いのちを育むのに
空気など要らないことを

霊長類とやらには青く映る
あの中庸の惑星で
雨 と称される恵みと循環が
ここにも
但し我らにしか受け取れぬ位相で
降り注ぎ
ひっそりと
しかし考えようによってはこの上もなく
賑やかに
時を告げる

地に
波紋はひろがり
星の眺めを
明暗を利かせた湖面へと 書き換える
今までも
そして今も

静かの海 を生かしたければ
記したければ好きに呼ぶがいい
だが
こんなにも
争いと愛とで 恩寵と試練とで
「月」というこの系は
笑いという笑いが少しも絶えないのだ

光線を照射する角度を
特定して
ヒトの衛星に画を届ける
交差しないことで
渦巻く嵐にさえ比すべき自らへ
行き着けるように


自由詩 月に降る雨 Copyright 吉岡孝次 2006-08-26 15:34:37
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