積み重ねて掘り出すべき数字
海月

歩行杖を自分の足みたいに使い歩く
歳のせいで足腰は弱っている
猫背以上の背骨が悲鳴を上げる

つるはしで地面を掘り続けている
それは根拠もない財宝を掘り出そうとしている
やめないのは可能性を信じているから
と、心の奥底で決めていた

街人の陰口には大分慣れた
それすらも聴く耳も持っていなかった
僅かに聞こえるのは君の声

テーブルの上で仄かにランプの火は揺れる
息を強く吹いたら消えてしまいそうに
弱々しくも照らしている

本棚には埃が溜まっている
必死になっても、無駄な事だって在るさ
空腹の胃にアルコールは効いた

幸福の法則や勝利の方程式
得られるのは巨万富
未だに縋り付く

現実を受け入れたのならこんなに苦労することは無いだろう
薄々と意地を張ることにさえも出来なくなっている
その事に気づいても気づかないフリをした

可能性を見失った
学者の末路は断末の叫び声

1と0

僕が最後に掘り出すべき数字は―――
僕が最後に掘り出した数字は―――



自由詩 積み重ねて掘り出すべき数字 Copyright 海月 2006-08-20 01:12:23
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