望洋フェリー
佐野権太

吃水きっすいの切り拓く直線に
弾け、昂ぶる蒼波の振幅も
いつか、ことわりまと
穏やかな泡波の
幾重にも沁みわたる

船側をすり抜ける速さに
戸惑い、いつまでも追いつけない吾は
ディーゼルの
くぐもった低音にもたれ
ただ、うねり、ただ

太い咆哮で
ぼうぼうと許しを乞えば
天体の巡るやさしさで
回頭してゆく
遥か船影

心海を潤おす辛い潮風の
ほどけるがままに
純水を垂らせば
ろうろうとたなびきわたる、航跡
置き去りの、白


自由詩 望洋フェリー Copyright 佐野権太 2006-08-19 15:38:20
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