明るい雨の昼下がりは
たりぽん(大理 奔)

空を飛びたいなど思わない
眠ってしまおうとも思わない
そんな明るい雨の昼下がりは
激しく窓ガラスで弾けて
つたい落ちる滴を
ずっと、ずっと見ていたい

  大切に飼っていた金魚を
  はじめて死なせてしまったときの
  天気を、思い出せないでいる

  生きている私は
  いつの頃から死んでいっているのだろうか
  ずっと、思い出せないでいる

とぎれめのないものに名前を付けず
庭の隅で動かなくなった
蝉を指さして
、生きている、といってみても
それがいつから死んでいったものか
思い出せないので
雨の中、蝉のように鳴いている
枝々を指さして
、死んでいる、ともいってみる

さあ、もう
どちらでもいいよね
明るい雨の昼下がりは
窓ガラスで弾ける滴を
ずっと見ながら
空を飛びたいなどとは
思わない
だから


自由詩 明るい雨の昼下がりは Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-08-17 20:35:53
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