柑橘系の太陽
A道化





日々の果ての
朝、(辛うじて未だ夏の、)
誰よりも先に、空が
窓で泣き出している


日々、とは
ひとつづきの熱風だった
その果ての、床と素足に
夏だったものが生温かい雨影の姿で
這っている


日々の果て
日々の果て
ああこんなになってもまた
新しく、朝、と思わなくてはならないから
朝、と頷き、朝、と頷き
ほらまた
過ぎた
集合時刻がまた過ぎた、そのこと
交わした約束がとっくにほどかれていた
そのこと
頷かなくてはならないから
ただ、頷き


その
諦めの
下降速度を利用したナイフで
夏蜜柑を開こう


太陽、柑橘系の、そのまぶしさで
いつかのまぶしさを眩ませながらきつく、きつく閉じたら
そのとき、日々の果ての床と素足の近く
ああ、そのときやっと、空よりも何よりも暗く
わたしは泣くことができるだろう



2006.8.17.


自由詩 柑橘系の太陽 Copyright A道化 2006-08-17 02:53:29
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