みどり ひびき
木立 悟





家のまわりをまわるうた
窓は朝に消えてゆく
窓は蝶になってゆく



壁に隠れ
また現われる
蝶は鳥になっている



蝶になった窓たちが
左まわりに空をまわし
鳥になった蝶を巡る



壁のはざまに沼があり
蝶になれない窓が沈み
近づくものを緑に照らす



家がまわり 地がまわる
遅れつづける光のほうへ
空はうすく片目をひらく



誰もいない通りの灯に
記憶ばかりがかがやいて
羽のうたを聴いている



鳥が曇になる無音
浮かびも沈みもしない水紋
沼をわたり 消えてゆく



片目が緑の空の下
うたになりかけた空の下
蝶は窓のない家をまわる















自由詩 みどり ひびき Copyright 木立 悟 2006-08-15 20:01:52
notebook Home 戻る  過去 未来