飛水記
木立 悟




霧雨が運ぶは遠い音ばかり



我が水の薄さに萎える羽虫かな



触れるたび遠去かる音日々の音



ゆらぐ道ゆらぐ光の水の声



水もとめせなを貫く痛みかな



影が消す文字さえ躍る午後の熱



足跡にひとつ目覚める水の羽



草の手に伝わる肌の迷いかな



なみだ涸れ歩く日の夢すぎし夏



天も地も区別なき笑み子らの声



水になれ曇にとどけと子らのうた



草鉄路ねむる命を撫でる風



散るものへ応えし刹那の炎かな



火の粉から火の粉へのうた照らすなぎ



鏡の手つなぐ水の手したたる陽



飛ぶ水の行方見つめる金属譜













俳句 飛水記 Copyright 木立 悟 2006-08-10 17:28:43
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