夏に還る
塔野夏子

また夏がめぐり来て
空も緑も色深まり
光と影が幻のようにあざやかに世界を象っています

夏の花々も色が強く
私には似合わないのです
降りそそぐまばゆさと熱にも
ただただ圧倒され
日傘の下をひっそりと歩むばかりなのですけれど

それでも夏は
ほかのどの季節よりも
深くそして濃やかに
私に浸透してくるのです
そして私は皮膚のうちがわから幾重にも
夏に還ってゆくのです

夏という季節
それこそが私の原風景なのです

(真夏にだけ見える
 空中にたゆたう昼の銀河……)

日傘の陰から
花々を見あげ 緑と空を見あげ
幾重にも夏に還りつづけるそのことを
ただただ嬉しく 味わうばかりなのです





自由詩 夏に還る Copyright 塔野夏子 2006-08-05 13:34:09
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