夜伽歌
千波 一也

蒼く枯れるまで傍にいて下さい

たなびく煙に ほそめるひとみは
可憐な強さをかくまって
夜風に つめは うるおいながら
狡猾こうかつな よわさに長けてゆきます

そら 、笑みの波紋が にじをさす


おぼろな橋の彼方から
数えなさい、とさとされています
今宵も

これは 襲来の類なのでしょうか
そろそろ 衝動に駆られてしまいそうです
どうか
壊す、などという言葉を選ばずに

紅く透けるまで傍にいて下さい



万葉のしらべは
黒髪を梳く櫛のに よく馴染み
気紛れに仰ぐ三日月は
黒いひとみに 
映えて
久し 



闇夜を満たす つとめは
灯火に 委ねてしまいましょう

さすれば、ほら
語り部の名に 固執することなく
すべに 甘んじてゆける気がいたします


それで良いのです

かなうもの と
かなわぬもの とを より分けず
舌先やわらかく 発音いたしましょう
いろいろ、 と

耳元ちかく で




自由詩 夜伽歌 Copyright 千波 一也 2006-08-05 00:57:35
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