し
木立 悟




し と
くちびるに露をあて
朝の光を遅らせる
草の根元の幽かな揺れに
応える静かな笑みがある


雨の日
葉を持ち
あふれるうたの指揮をする
道のうた 流れに映るうた
やがてどこかへ干いてゆくうた


目に残された水たまりから
無いものの火がやってきて
曇へと至るしるしを踏む
こぼれても こぼれても
尽きることのない滴を歩む


ふいに吹かれはじめる青
晴れが晴れに運ばれる先
粗く積まれた空の一角
落ちてゆくかけらの内側に
青と白は重なってゆく


静かな指が静けさを脱ぎ
さらに静かなはだかとなり
草の根元に生まれる水に
し と
無言の約束をする













自由詩  し Copyright 木立 悟 2006-08-04 19:16:22
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