透明花火
藤原有絵

浴衣に片思いを忍ばせて
ぼうっと光る
夜店の明かりに吸い込まれていく

君は決して
私を待つ人でなく
私は決して
君を待ったりしないと決めていて

今思えば

それだけで
私たちの関係の全てでしたね


どおん


夏の轟きに
言葉を攫われてしまった


その言葉は

待つ事も無く
待たれる事も無く

思い出すたび
甘やかな記憶として
少しずつ褪せていき

透明なものへ
還っていこうとするのです


指先だけで繋いでいた

その関係こそが
私たちの全て
だったかのように


攫われた言葉は
当時の私
そのものでした





自由詩 透明花火 Copyright 藤原有絵 2006-08-04 01:53:11
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
四文字熟語