早春
船田 仰


がりがりにやせてしまった焦げ茶みおろして
ひっかかった青緑を考えるとしようよ
誰かの父親は誰かの息子であったのだし
あの信号はきっと恥ずかしくてあかくなるにちがいない
きっとそうだよ

めずらしく君が革の靴をはいていた
「からっぽ」がはやっているみたい
それは太古からずっとはやりつづけて
今では掴まえられない概念なのだ

鍵を忘れてしまった午後のかたすみで
ぬくぬくとさみしくなっていこうではないか
名前を呼ぶたびに顔をゆがめて覗き込んでは
「からっぽ」みたいに腕をくもうではないか
いつか見たことがあるみたいな瞬間の長さをこえて
帰り道を共有する青緑のサインをみのがさないで
目じりから零れる焦げ付きだなんて
やすいったらありゃしないんだ
ねえ
ぶらさがったかたちをおぼえておかなくても
つぎはもっと愛せばいいではないか



ねえ ねえ きのうとおなじくらいだけのさむさだよ やっと







未詩・独白 早春 Copyright 船田 仰 2004-03-03 20:15:46
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